第4章 曇天に差し込む光
「サラ殿の気持ちを無駄にするおつもりですか?今は自身の安全を第一に考え避難してください。サラ殿のことはきちんとこちらで対処いたします」
その背後で別の兵がぐったりとしたサラの身体を丁寧に持ち上げる。
こういう時の訓練を欠かしていない兵らの行動は迅速で、彼女はすぐに医務室に運ばれ手当てを受けるだろう。
自分にできることは何もないことを悟りラジはぐっと口を引き結ぶ。
「分かった……」
立ち上がり兵に守られながら城の中へ戻る。
気が付けば自室へと帰ってきており、濡れた身体を清めようと侍女が走り回るのを放っておいてほしいと部屋から追い出す。
しんとなった部屋に一人残ったラジは机へ向かい大きな音が鳴るのも気にせず乱雑に座る。
机の脇にはまだ読み途中の文献が置いてあった。
丁寧に貼られた付箋は湿気のためややくたびれていて。
「くそ____っ」
こみ上げる衝動のまま文献を掴み叩きつけようとして。
差し出す少女の笑顔を思い出し、文献を手にラジは机へ伏せた。
風が窓を揺らし、雨が斜めに落ちる。
空には雷雲が立ち込め、嵐が来ようとしていた。