第4章 曇天に差し込む光
その日も空は雲に覆われ今にも雨が降りそうな天気だった。
本日の予定は田園地帯の視察。
連日の悪天候で川が溢れ、作物に甚大な被害が出ているらしい。
陳情により既に減税の措置は取られているものの、現状を見て来いという陛下の言葉に王太子であるラジが赴くことになった。
実際に視察し判断を下すのは共に行く専門の学者や執政官たちだが、最近のラジの様子を見て陛下も思うところがあるのか。
御心は分からないものの、久しぶりの外にラジもサラも少々浮足立っていた。
「日数はだいぶ余裕をもっているらしいからな。ゆっくり馬車旅を楽しめそうだ」
「途中の温泉地で一泊するらしいですね。楽しみです」
気分はもはや旅行である。
荷物もすべて運び込まれ、あとはラジが乗り込むだけとなり外へ出た。
既に待機している多数の馬車の中、兵が固める中心の馬車へラジが近づく。
その後をサラが追うが、その視界にちかりと光が走った。
曇りなのになぜ?と疑問が浮かぶと同時にぞわりと背筋に走る嫌な予感。
間違っていてもいい。サラは足に力を籠め駆け出した。
そこからはまるでスローモーション。
馬車に近づいていたラジに迫る黒塗りの矢。
その切っ先はラジの胸にまっすぐ向かっていて。
「ラジ!!」
堪らずサラは叫び、その体を覆うように抱き着いた。
瞬間左肩に熱い痛みが走る。悲鳴をあげるのを歯を食いしばり阻止したものの、勢いついた身体を制御する余裕はなく、ラジと共にその場に倒れ込んだ。
途端に周囲を護衛の兵が囲む。