第2章 物語の外側
恐らくサラと同じ評価を思っていたのだろうラジは認められないのか口を噤んだ。
「私が側近として十分だとお認めになってはいかがですか?」
「ふん、たかが座学の基礎と訓練だけでそこまで得意になれるとはおめでたいな」
今日はもう切り上げるつもりなのか訓練用の剣をサカキに渡し城内へと歩き出す。
「あ、ラジ殿下」
「なんだ」
「執務見学の後お茶の用意をしておきます。終えられましたらテラスへお越しください」
言われた内容が予想外だったのか虚をつかれたように振り向きサラを見る。
目が合えばサラは少しからかいの色を乗せ目を細めた。
「気が利くところも側近らしいでしょう?」
「そういうことか!」
ラジのツッコミにくすくすと笑い、今度はふわりと微笑み礼をした。
「執務頑張ってくださいませ」
「………」
「ラジ殿下」
ポカンとしていたラジはサカキの言葉にはっと意識を戻す。
「……言われなくても」
ようやくそれだけ振り絞り、ラジは背を向け城内へと入っていった。
「……殿下」
「なんだ」
「お耳が赤いようですが」
「喧しいわ!動けばこれくらいなる!」
聞こえてくる漫才のような掛け合いにくすくすと笑いながらサラは上着をはおり直した。
***
なんだかんだと言い合いながらもサラのお試し期間は順調に過ぎていった。
ラジも文句は言うが陛下に掛け合うことも無く、最近は朝起こしに行ってもどこか諦めた視線で見てくるだけで文句は言わない。
(あとはもう少し友好的になってくれればいいんだけど…)
今のラジの心境としてはサラを正面から罷免する理由はないが、側近にしておきたくもないといったところだろうか。
このままではお試し期間の終了と共に『馬が合わない』などという理由で罷免されかねない。
側近として仕え始めて半月。最初は能力を示すことに重きを置いていたが、そろそろ懐柔する方向にシフトした方がいいかもしれない。
そうして信頼を築いて、そして。
どうしようか。
そこまで考えサラはいつもの思考の袋小路へ陥り頭を抱えた。