第1章 「夢の中のアイツ」
いくら広場は安全だからって民間人の私がなんで繰り出されなくちゃいけないんだか。こんな日こそゆっくり家に居たいってのに。
「今年の景品は何があるかな~アルマは知ってるか?」
「景品に関しては管轄外だよ。」
「カイマンの欲しいものがあるといいな!」
もちろんかなり強いふたりも参加する。ふたりはいつも一緒に魔法使い狩りをしていて息もぴったりだ。
今夜も一緒に行動するのだろう。
「ふたりはほんと仲良しだな。」
「お前は俺たち以外の友達はいねーのかよ。」
「失礼な。いるよぉ友達。でもまあ、ふたりのような間柄のは今はいないなあ。」
「今はってことは…」
「なんだ?死んじまったのか?」
「ははは、もしかしたら死んでるかもねー。結構やんちゃしてたし。アイツはこの町が合わなくてね、出て行ったんだよ。連絡をとるでもないし、どうしてるかもさっぱりなんだ。」
「ふーん。もしここで魔法使いに殺されてたら会えたのにな!」
「ゾンビになったやつとは親でも会いたくないよ!」
カイマンは記憶とともに正常な感覚までなくしちゃったのか?って思う時がたまにある。
「はーごちそうさま。おいしかったよニカイドウ。」
「もう行くのかよ、いっしょに行けばいいじゃねえか。」
「そうしたいがホール自治会と打ち合わせがあるんだよ。じゃあ、またあとでね。」
「うん、またあとで。」
「広場までの道でゾンビに襲われんなよ~」
カラン
「ふー。腹ごしらえも済んだし、時間外労働がんばりますか。」
今夜はホールのゆがみが増す。空はいつも以上にどんよりと暗く、ぶるっと寒気がした。
いやなことが起きないといいんだけど....
そう思いながら会場へ向かった。