第8章 落とし穴
カウンターに片手を付き、
息を整え、落ち着いたところでセイさんが口を開く。
「下の名前、なんていうの?」
「雪菜っていいます。」
答えてから、恥ずかしくなって俯く。
自分でもおかしくなるくらいよそゆきの声だった気がするし、声も小さかったかもしれない。
・・・変に思われたかも。
ばくばくとまた大きな音になる心臓音。
暑っ・・・身体が熱くなっていくのが分かる。
・・・変な汗かきそう。
こっちはもう顔を見上げる事すらできず、
机の上のコースター1点をただ見つめてるっていうのに・・・落ちてきた言葉は。
「そっか、よろしく。ユキ。」
呼び捨て!????
呼ばれた途端にどくんと心臓がとび跳ねた様に脈打って、びっくりした。
あ・・・
反射的に顔見ちゃった。
少し控えめの、ちょっと困ったような笑顔。
どうしよう・・・この人、すごく格好いい。