第7章 NOVE
「あ。黒崎君だ。」
そう言ったものの、カッターシャツに髪を後ろで一つにまとめた姿はまるで別人だった。
いつもとは全然雰囲気の違うカチッとした雰囲気の黒崎君。
そういう格好もすごく似合っていて格好いいと素直に思った。
学校では愛想ないくせに、やさしそうな顔をしてお客さんと話してる・・・
なのに。
私の姿を見て一瞬目を見開いたものの、何事もなかったようにカウンターのお客さんと話を再開するその姿勢は完全に黒崎君で・・・。
・・・・無視、されたし。
チーン・・・と途方に暮れていると、
頭の上で、またくすくすと彼の笑う声がして、
「一番奥のカウンターに座って。」
と促され、私は一番奥のカウンターに座ることができた。
・・・・。
「・・・・・・。」
上から落ちてくる視線が痛い・・・。
「僕、なんて言いましたっけ?」
黒崎君がガラスに入ったキャンドルに火をつけて、ことんと目の前に置いてくれる。
テーブルの上がまあるく明かりに包まれて、
そういうことにまた、うっとりとする自分がいる。
うわぁ、と歓喜の声が出るのを抑えて俯いた。
「はい。すみません。」
チラリ・・と黒崎君を見るけれども、彼は何も言わない。
俯いて、じっと彼の言葉を待つ。
ふう・・と黒崎くんのため息が聞こえて顔を上げると、別の所から声が飛んできた。
「あら、ハルいつ彼女できたの?」