第7章 NOVE
それはクレイアニメのように1コマ1コマゆっくり動く。
宙をかいた手が起した風に気付いて彼が振り返り向き、
瞬間に私の手を掴む。
その手をを引き寄せるようにして私の体重は彼の方向へと動き、
彼の左手が私の背中にまわり、身体を受け止める。
・・・・そのまま引き寄せられて、
ぐっと力が入った腕にすっぽりと収まった。
きゅっと身体を包まれて、
ふわっと、男の人のいいにおいがして。
同時に心臓をぐっと掴まれたような痛みが走った。
黒崎君とは違う男の人の匂い。
かすかに香る香水の匂いに・・・頭が・・くらくらする。
無音、だった。
世界は音を失くしてしまったかのように私には何も聞こえなかった。
ただ、彼の心臓なのか私の心臓なのか分からない、どくどくと脈打つ振動だけが頭に響いていた。