第7章 NOVE
彼が後姿になってから、やっと落ち着きを取り戻し、改めて彼を観察してみる・・・。
グレーのカッターシャツ。
腕まくりがされて、そこからすらっと伸びた腕に少し骨ばった綺麗な手。
指が長いのか大きなその手には2つの違う銘柄の煙草が握られている。
黒のパンツの上に腰から下までの黒いエプロン。
・・足・・長い。
うっかり声に出てしまいそうになるのをぐっと飲み込む。
それに・・・全体的にすらりとしてるけど、程よく筋肉がついてて・・・
・・・・運動、なにかしてたのかな。
頭の中の独り言・・・多。
・・・・って何考えてんだ、私!!
この人に会ってからなんか私、落ち着かない。
冷静にならないと・・・
顔をぐっと手で覆って気を落ち着かせてから前を向いた、
――その瞬間。
っ!!!
すでに立ち止まっている彼に危うくぶつかりそうになった。
ひゃっ・・・
と、飛びのいてバランスを崩し、
一歩下がった右足の下には・・・
地面が無かった。
(ウソでしょ!?)
と・・身体は後ろへと重力に引っ張られていく。
とっさに彼に向けて伸ばした右手は宙を掴んだ。