第7章 NOVE
――びくっとして振り返る。
そこには雪菜よりも頭2つぶん背の高い男の人が立っていた。
真っ黒の髪。
少し長めの前髪からのぞく、黒い瞳と目が合った・・・・
すうっと音もなく、その瞳に吸いこまれる。
遠くのほうからどくどくという音がかすかに聞こえてくる。
・・・なんの音?・・・
頭はぼんやりと思考しているが、目はさっきから彼にとらわれたままだ。
「おーい。」
彼の声に、
はっ、と我に帰る。
遠くにかすかに聞こえていたはずのどくどくという音は、今まさに耳元でばくばくと音を変え、身体全体を駆け巡った。
「あっ、あの・・・。」
少しの空白。
「うん。」
と、静かで優しい声がして。
じっと見下ろしているのを感じる。