第6章 曖昧なグレーゾーン
お昼御飯は皆で近くのファミレスになった。
「ホント・・・食べるものまで一緒だからみてるこっちが笑っちゃうよ。」
私と黒崎君を見比べて広子は言葉通りくすくすと笑う。
隣の黒崎君は特に反応しない。
「だって、ここに来たら和風ハンバーグって私の中で決まってるもん。」
「そういえば、雪菜はどこのファミレスでもだいたい和風ハンバーグだよね。」
「というか、マック行くと、チーズバーガー。スタバはキャラメルマキアート。って外食のメニューはほとんど決まった同じものしか食べないよね。」
「言われてみれば、雪菜がメニュー表みてるとことかみたことないわ。」
何がおかしいのか、女子は楽しそうに人の話で盛り上がっている。
そんな風に言われても、食べるものが固定されるのは昔からだしなぁ・・と黙々とハンバーグを口の中に運んでいく。
そんな私を観察しながら、神代君が口を開いた。
「動物っていうのは、幼いころから食べている味に安心して美味しいと感じるんだってさ。」
急に話し始めた神代君に、女子たちも黙って彼の話に耳を傾ける。
「幼いころ、親に与えられた安全な食べ物をイコール美味しいと認識するように。逆に、新しい味は不味く感じるように脳は作られているらしいよ。
親から離れた時に間違って身体に悪いものを食べないようにね。」
「確かに私、子供の頃から好きなもの一緒かもしれない。」
・・・なるほど。
一人静かに納得している私とは別に、有香たちは初めて食べたトムヤムクンが美味しかった理由を神代君に説明してと盛り上がってる。
トムヤムクン・・前に死んだザリガニの匂いがする!と思わず店員の前で口走って、広子にめちゃくちゃ怒られたな・・・
「どーぶつさん、ほっぺたにソースついてますよ。」
棒読みのような感情のない声で黒崎君がつぶやく。
「え?動物??ってかホント?」
「右です。」
私は鞄の上のマフラーを机の上に置き、慌てて鞄からタオルを取り出す。
その時、
「それ、黒崎の?」
とやけに冷静な神代くんの声が耳に届いた。