第6章 曖昧なグレーゾーン
「おはよ。また、こんな後ろの席座って。」
神代くんが笑いながら私たちの前の席に座る。
今日もバーバリーのものであろうシンプルなチェックのシャツとニット。
ボストンバックをさらっと肩に担いじゃったりしても、なんか格好いい。
有香がはしゃぐのも頷ける、全面的に輝いているような彼のスター性オーラ。
反対に、黒崎くんはといえば、きちんとした神代くんに対抗するかのように、ゆるい格好をしている。
裾にカラフルな猫のプリントがしてある可愛いベージュのカーディガンはどこかのブランドで即買いしたと言ってたお気に入りのものだ。
ゆるゆるの格好に大ぶりの黒ぶち眼鏡。
どかっといつもの大きなバックを置いて、神代君に1つ椅子をあけて座った。
眼鏡をはずせば格好いいのに・・・
・・・・・。
・・・・・。
ふと昨日の黒崎君の顔が浮かんでお腹の下がジュンと反応する。
妖艶な・・あの・・・目。
だめ。
・・・変な気分に・・
ぶんぶんと首を振って忘れようとする。
そんな私をよそに、皆と一緒の時は基本テンションが低めの黒崎くんは、挨拶をするでもなく一言目に、「はい。」とだけいって、大きな鞄から充電機を渡してくれた。
お礼を言ってそそくさと教室の隅で電気を拝借する。
家に帰った時、持ってくるつもりが慌てて着替えたために忘れて来てしまったのだ。
いくら携帯嫌いな私と言えど、一日使えないのはやっぱり心もとない。
席に戻ってくると、恵がにやにやとしていた。
「携帯の充電、切れてたのにね。」
と言われて、私は意味も分からず、恵に笑ってすませた。