第6章 曖昧なグレーゾーン
神代君が指す先には、
机に置かれた私のマフラー・・・
「僕のじゃないですよ。」と黒崎くん。
「それ、お揃いなんですよ~」と広子。
広子の茶化している空気とは確実に反対の真顔の神代君がそこに居た。
いつものお兄ちゃん説教モードと同じ、あの冷たい空気。
「付き合ってるの?」
神代くんはただ一言そう言った。
「付き合ってないよっ。」
と言った私の声も、
「付き合ってないです。」
と隣から発せられた黒崎君の静かな声も、
「やっぱり、そーおもっちゃいますよねー!!!」
という明るい有香の声にかき消される。
昨日だって3人で一緒にいたのに、
なんで急にそんなことを聞いたんだろう。
マフラーお揃いはやっぱりやりすぎだったのだろうか・・・。
机の上のマフラーをなんとなく、神代君から見えないような位置に降ろす・・・。
そんな私をよそに、いつも通りの有香が、
「でも、付き合ってないんですよ。私たちはもう、なれちゃいましたけど。」
なんて言いながら神代君に笑いかける。
「どうして分かるの?」
なぜか神代君はその姿勢を崩さずに同じ口調で淡々と話す。
「雪菜が付き合ってないっていうからですよ。」
と当たり前の事のように恵は言った。
・・・。
神代君の視線を感じた瞬間、
「黒崎とつきあってるの?」
急に現れた神代君の声と内容に、びっくりして、思わずぶんぶんと大げさに首を振りながら、
「つきあってないよ!!」
と反射的に答える。
心臓がバクバクいってる。
付き合っていないけれど、黒崎君と私の間にある秘密。
・・・後ろめたい、こと。
志水さんまでが脳裏によぎる。
・・・・。
神代君はそこではははと笑った。
「な、訳ないか。」
いつもの神代くんだ。
「っていうか、普通に考えればマフラーお揃いっていうのはないだろ。お前らおかしいぞ?」
なんて言ってさらに笑う。
そんな風に明るく笑う周りとは一緒に笑えずに私は膝の上のマフラーをただ見つめていた。
普通に考えると・・・
普通に考えると志水さんのあの力はなんだろう。
普通に考えると・・・
普通に考えると、私と黒崎君の関係はなんだろう。