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メメント・モリ

第6章 曖昧なグレーゾーン


「・・甘い。」




黒崎の口から寝起き独特の掠れた声が漏れる。




「うん、チョコだからね。」






寝ているときは口の中に食べ物をとりあえず入れる。

これは彼自身に教えてもらった方法。


夢から帰還できる、本人が見つけた唯一の方法らしい。




「ちょこ?」




「そうだよ、黒崎君の鞄中入ってたやつ。」




「僕の鞄・・?いつ買ったやつだろ・・・」



むくっと起き上がって、残っていたミネラルウォーターを飲み干す。

その自然な様子を見て雪菜は安堵する。


どうやら今日はもう目を覚ましてくれたみたい。


食べ物を口に入れると言う新技を知るまでの間は、起すのに30分以上はかかっていた。

起きたよって笑いながら言うくせに一瞬目を離すと横になって完全に寝てたりとか・・・

朝の黒崎くんは幼い子供みたいだった。



「・・・今、何時?」



彼を見ると、髪の毛が寝癖ではねている。

そういうところ、子供みたいで可愛いと雪菜は思った。。



「8時半過ぎてるよ。」





「あー・・・うー・・ん。


えーっと、僕は今日1限ないですね。」




「私はあるんですけど。」




「っはは・・、そっか。

・・・じゃ、時間やばいじゃないですか。」




「うん。結構ぎりぎり。」




「いっそ一限さぼって昨日の続き、します?」




!?

にこっといたずらに笑う黒崎くんにドキッとする。

その顔、反則だって。



雪菜は目の前にあったクッションを黒崎に投げつけた。



「ほら、早く眼鏡かけて!出るよ!」










「はいはい。学校まで送っていきますよ。」


眼鏡を掛けながら、黒崎は嬉しそうに笑う。


恋人同士でもないけれど、

続いてるこんな友人関係。


私は嫌じゃない。

ただ他に言いようがない。

嫌じゃない。。

だから、黒崎君がこんな風に笑ってくれる限りは今のままでいいって思ってる。
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