第4章 そこから見えているセカイ
「え?・・・見える・・んですか?」
急におかしな話になってきたなとくらくらする頭でも理解した。
「そう。映像として見える。長い時間じゃないけど瞬間的に少しずつね。目からでなく脳に直接映像が流れてくるっていったほうが近いかもしれない。」
車は魔法の絨毯のようにすいーっと音を立てずに右折する。
不思議な話よりもナビ通り運転してくれているほうに意識はいき、内心ほっとしていた。
何を言っていいかわからず黙っていると唐突に聞かれた。
「男に好きになってもらえるのが快感?」
「え?」
「そういう露出した服を着ていろんな男に好きって言われたいの?」
服・・・。
次回からは気をつけようと反省する。
「言われたくないです。私が誰かの事好きになりたいだけで、好きでもない異性に好きになってもらいたいなんて思ったことないです。」
落ち着いて、一つ一つの言葉をしっかりと伝えてみる。
「あははは、なに?それも戦略?そういうのって自分で考えるの?」
響いたのは、また乾いた笑い声だった。
この人なんなの…?
もう、どうでもいい。相手にする必要なんかない。
呆れて黙る雪菜をよそに、
「あ、コンビニついたね。」なんて軽く言って、志水はできるだけ光が入ってこないような場所に停車した。
サイドブレーキを引き、一息ついたところでまた話しかけてくる。
「じゃあ、恋したことないって言ってたけど、本当なの?男が嫌いとか?」
もう、答える気にもなれない私は黙って窓の外を見た。
コンビニには沢山の人がいる。
「ねぇ、教えてよ。ぶっちゃけるとさ、君、うちの奥さんにそっくりなんだよ。雰囲気が。そういう男好きの女の話が聞きたいんだよね。」
・・・・・頭きた。
もう窓ガラス割ってでも降りよう。
そう決断した時だった。
ググッと革の音がしたかと思ったら、
頬に、冷たいものが触れた。
手・・!?
はっと彼のほうを見ると、彼は私を憎しみがこもった黒いまなざしで睨んでいた。