第4章 そこから見えているセカイ
長く長く感じていた時間は、志水の言葉であっけないほど簡単に幕を引いた。
机に手をついて立ちあがると、ぐるりと脳が回転するような感覚がして、思っていたよりもずっと酔っていることを実感する。
外にでて、冷たい風が顔を冷ましても、頭の中にかかった熱い靄のような酔いは全然振り切ることができなかった。
さっさと男の人とはおさらばして、反省会ならぬ女子会を開かなきゃ。
それが一番楽しい時間を過ごせる。
5メートルくらい先の駐車場で今日はごちそうさまでしたと挨拶をしている皆の声が聞こえた。
ブーツなんて履いてくるんじゃなかったな、なんて反省してやっと靴を履き終わって追いかけようとしたときだった。
!?
ぐいっと腕が掴まれて後ろによろける。
「じゃあ悪いけど山下は全員ちゃんと送り届けてね。俺はこの子と家の方向が一緒らしいから送って帰るわ。」
頭の上から声がしたことにびっくりして振り返ると、そのまま頭を後ろから抱えられて、そのまま扉のあいていた車に押し込められる。
えっ!!ちょっとまって、雪菜!と有香の声が聞こえたと思ったときにはパタンと落ち着いた音とともに車の扉が閉まった。
高級車。
新しい革の匂い。
慌てて扉を開けようとしたが、ノブはなんの意味も持たず軽い力でただ動くだけだった。
「開かないよ。チャイルドロックがかかっているからね。」
グググ・・・と革がこすれあう音がして志水さんが運転席に座る。
「・・あの」
雪菜の言葉を無視するようにして彼は話す。
「家、どっち?」