第4章 そこから見えているセカイ
信号が青に変わり、視線を前に戻すと、すぐに目的のお店が見えた。
降りるときにもう一度お礼を言うと、黒崎君は遠くをみて少し考えてから私のほうを向きなおした。
「今日、この後俺バイト10時までなんで。」
ん?
「?」
きょとんとしてその場に固まる。
帰りは有香たちと一緒に帰るつもりだし、迎えに来てもらう必要もない。
「・・・・?」
しばらく考えていると、
今は分からなくてもいいですから。
と言われ、さっさとドアを閉めるように促された。
180度向きを変えて店のほうへと歩き出す。
コツコツと普段あまり履くことのないヒールが心地よい音をたてて、視界はいつもの靴よりも5センチは高く気持ちがいい。
雪菜は、いつもより少しだけ「いい女」になったようなそんな気分に浸って背筋を伸ばして歩いた。
男の人はさておき、久しぶりに友人4人でそろって飲むことがまず嬉しい。
・・・・・。
「・・・・今自分が見ている相手が、本当は自分の思っていたのとは全然違うヒトであるかもしれない・・・・・・・。」
気がつくと雪菜はさっき印象に残った一言をつぶやいていた。
・・・・・・・・誰の事・・?
考えようかと思ったが、
遠くで、有香達が手を振っているのが見えた。
私はそれに手を振ってこたえた。