第4章 そこから見えているセカイ
自分の投げた言葉を何度か反芻しながら読み取ろうとする雪菜を見て黒崎はしばらく間を開けてからまた話しだす。
「まぁ、大切なのは、お互いに世界があるという事実を念頭に置いておくことなんだと思うんです。」
「・・なるほど、なんとなく分かってきたよ。」
「反対に、今自分が見ている相手が本当は自分の思っていたのとは全然違うヒトであるかもしれないと疑うことも必要なんですよ。」
「それ、ちょっと怖い。」
「早瀬さんはなんだかんだ言って全然人の事見えてないですから気をつけなきゃだめですよ。」
・・・。
・・・・。
「ねぇ・・・これって何の話・・?」
ふと雪菜がその気配を感じて黒崎のほうを見ると彼はいつもの笑顔を送っていた。
屈託のない笑顔。
信号で止まっているのだ、赤い光に照らされた眼鏡の奥の瞳を見つめてみる。
くすくす、と彼は怪しく笑った。
「今日はここまで。」
ぴしゃりと言い切った彼の言葉で、私は言葉を飲み込む。
・・・今日はここまで・・って。
・・・ヒント屋のおやじか?