• テキストサイズ

メメント・モリ

第4章 そこから見えているセカイ


「お待たせしました。」


バタンと車のドアをしめて車に乗り込む、黒崎君を見ると少し嬉しそうな顔をしていた。


「服、それ着てきたんですね。」


「これがいいって黒崎くんが言ったんじゃない。」


茶系のニットセーターにふわふわ素材のちょっと短めのスカート。
アニマル柄でちょっと遊んでる感じがするけれど、全体的に可愛いイメージでまとめてある。
 
店から家までの間に、何を着て行こうか迷っていたら黒崎くんがこの服がいいというので着てきたのだった。


「素直に着てくるから笑っちゃいました。」


「え!?笑うとこ!?」


カチャとシートベルトのしまる音が響く。


「まぁまぁ、じゃ、いきましょうか。」


そう言って発進する車。

黒崎君は好きな曲が流れて上機嫌でハンドルを切る。

大声で歌っているところ悪いけど安全運転でね。なんて、そんなことは言えない。





一曲まるまる大声で歌いきって、曲と曲の合間、急に静まり返った車内。






「神代に合コンって言わないのは正解でしたね」



静寂をやぶって届いたのは歌声とは別人のような冷たい声だった。

びくっとして、黒崎君を見るが前方を見詰めたまま表情は読み取れない。


「だって・・・、そういうの好きじゃないって神代くん、前言ってたじゃない。」


雪菜は後ろめたさを感じて思わず小声になる。


2か月位前、「合コンに行く・・」と神代の前で口に出したとたん、「何しに行くんだよ。」と急に不機嫌になった彼を雪菜は忘れられない。


言ってはいけなかった。


そう思った時には遅く・・・


「何しに行くんだって聞いてンだけど」


と追い詰めるような2度目の問いかけが始まっていた。


「何しに行くも何も、皆でお酒を飲むんだよ」


と焦って伝える雪菜をよそに、


「そんなことは分かってるよ。」


と強い口調の神代。

なぜ、追い詰められているのか。
どうしてこんなに彼がきつい口調で話すのかも分からぬまま、その後は神代くんらしい真面目な説教が続き、合コンに来るようなやつにロクなやつはいないだの、なんだのかんだの・・・


完全にいつものお兄ちゃんと化し、雪菜は妹のように諭される時間が続いた。
/ 140ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp