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メメント・モリ

第4章 そこから見えているセカイ


「黒崎くん、いつも荷物持ちすぎなんだって。」


彼のその右手に抱える大きな黒いバックには、きっとライターが3つは入ってると断言してもいい。


「全部必要なものしか入ってないですよ。」


「でも、少し厳選したら?重たいし大変そうだよ?」


「厳選無理なんで、四次元ポケット作ってくださいよ。」


「いいけど。ちゃんとお腹んとこ貼ってくれる?」


「いいすよ。その変わり豹柄にしてください。」


「豹柄の四次元ポケット付けてる人の隣歩きたくない・・かも」

雪菜は、背の高い黒崎のお腹についた半月型の布切れをそうぞうし、耐えきれなくなって大きな声を出して笑ってしまう。


「なにいってんですか、めちゃめちゃオシャレにつけこなして見せますよ。」


「つけこなすって・・・ぷふっ。」


こんなどうでもいい会話も、黒崎君がテンション低めにボケたりするのがまたおかしくて、彼との時間が好きになるのだ。



5時まであと1時間。

黒崎くんがマフラーが欲しいからともう一軒付き合うことになった。


「このマフラーにします。」


そういった黒崎くんをみると、すごくかわいいマフラーを巻いている。
千鳥柄のマフラー、きれいな色で刺繍されたブランドのロゴマークが超可愛い。


「私も買う。」


お揃いになりますよ?と、彼は言わなかった。


寒いのでつけて帰ります。と店員さんに言って、店を出てくるときには2人とも同じマフラーを付け、私は鞄に、黒崎くんは財布のチェーンにピンクのうさぎをぶら下げているという容姿になっていた。


「なんか、これじゃあペアルックみたいじゃない?」


そういう私を上から見下ろして、


「まぁ、いいんじゃないですか?」


さらりと彼はいう。


ちょっとやりすぎ…?周りの人に、変な風に思われるかな?
と違和感を覚えた頭が彼のそんな言葉でリセットされる。

そうか、まぁ、いいか。別に彼もそう言っているわけだし、本当に2人とも欲しかったわけだし。


『私たちの世界では普通のこと』だ。






・・・けれど、それは『他の人が見たらおかしなこと』でもある。恋愛感情に疎いこの時の雪菜はそんなことをまだ深く考える事はなかった。
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