第3章 友人カミシロ
「じゃあ、チケットは何としても手に入れないとな。」
と言って、張り切っている神代君。
彼がこう言ったのだから、
きっと入手しにくいこのチケットも、あっさりといい席を取ってきてくれるのだろうと雪菜は思う。
私と黒崎君みたいに、そのライブの日程すらうっかり忘れかけるような人とは違う。
きっとそこに行くまでの方法や時間も考えて私たちに提示してくれるのだろう。彼に任せてしまえば全てが安心だった。
もしもお兄さんがいたら、こんな風にいつも優しく、面倒をみてくれるのだろうか?
神代のような外見がよく人気のある、面倒見のいい兄ができた自分を想像して雪菜はうっとりとした。
うん、いいなぁ。。
神様、こんな素敵なお兄ちゃんをください。
――なんて。祈ったって絶対に無理だし。
母も亡くなった今、私には弟も妹もできることはなく一人っ子の肩書が外れることはない。
神代君が友達でよかった。
兄のようなあこがれの存在。
「夏、楽しみができたね!!テンションあがったらもう一個パフェ食べたくなってきちゃった!」
雪菜は嬉しそうに笑って、メニュー表を開く。
「ダイエット中じゃなかったっけ?」
コーラを片手にあっけらかんと聞いてきた黒崎君に、雪菜はさっき神代に教えてもらった覚えたてのスペイン語を使う。
「ケセラセラ♪」