第2章 親友クロサキ
黒崎君は何も言わなかった。
入口を入ると、急に真っ暗になった。
なにか石鹸のような芳香剤の匂いが鼻をくすぐる。
ぼんやりとした薄暗い明りのなか、いくつかの部屋の写真が載ったパネルが光っていた。
どうでもいいっていう気持ちが全てを凌駕して、
初めてのホテルでテンションが上がる。
「私、ラブホって初めて入るんだ。ちょっと気になってたから、なんかすごいドキドキしてきた。」
パネルを一つ一つ見ると、それぞれの部屋には個性がありすごく可愛かった、外見はあんなにそっけない建物だとは思えないほどだ。
「ねぇ、あそこのパネルみて!プールついてるよ!しかも滑り台つきのプール!!」
黒崎君は、僕がおごります。とぽつと言って、下の画面のボタンを押した。
パチ
と音がして、プールのパネルは暗くなった。
私は正直になにも考えていなかった。
店長の言葉でなにかが切れてしまっていたのかもしれない。
ラブホテルがどういうところで、
そこに黒崎君と来ていて、
とか、もう、・・・・・・・・どうでもよかった。
黒崎君がその気なら、それでもいいと思っていた。
ただ自分でも訳が分からないほどテンションが上がっていて、初めてのホテルというものを楽しみ始めていた。