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メメント・モリ

第2章 親友クロサキ



すっと目線をあわせるようにして黒崎くんがしゃがむ。


「・・・・・。」


私はたった今起こったことの処理がまだできずに、両手で自分を抱くようにしてぼんやりと座っていた。






なぜか私の顔を同じようにぼーっと見ていた黒崎君が、はっとなって声を掛ける。




「息できた?」




「・・・いき?



っていうか・・・何?息できたじゃなくて、なに?」


混乱している私はなぜか半笑いだった。

どうやら予想外の出来事が起こると私は笑うらしい。




「・・・・そういう意味じゃなくて。」




冷静に話す黒崎くんは既にもういつも通りだ。




「えっ・・っちょっとまって、なに?私、全然意味分かんない。」




「早瀬さん、息してなさそうだったから。」




「・・・いや、だって今の、逆に息できないよね?」




「まぁ、そうなんですけどね。」



ぜんっぜん意味分かんないし。



「・・・・・。?」



「僕としてはあんま今の意味ないんで、忘れてください。」





!!?




さ、行きますよ。

といって部屋を出て行く彼は何事もなかったようにこちらに声を掛けて歩いていく。

部屋に戻っても、
黒崎君はもちろんいつも通りだし、店長もいつも通りだった。


そんな変わらない時間に、
私も、本当はなにもなかったのではないか?という錯覚に陥ってしまう。


ただ・・・





ただ・・・



唇だけは・・・・


黒崎君の柔らかなその熱を・・・・・・忘れる事ができなかった。
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