第11章 束縛

黒崎の予想に反して、雪菜は戸惑いを見せる。


「なにを迷ってンですか？」


明らかに強い口調。

切羽詰まったような感情が表れているのが自分でも分かった。


「・・・迷うっていうか・・・」


「僕の存在が無くなったら寂しいくせに、なんで即答しない？」


早口になっている自分とは反対に、彼女は考えながらゆっくりと言葉を放つ。


「けど・・・一生好きになることがないって分かっている私と一緒にいるよりも・・・」


「・・・・。」


「・・いつか好きになるかもしれない、自分のこと好きって言ってくれる子と一緒に居たほうが・・・」


「・・・・。」



「黒崎くん、幸せかも知れないよ・・？」



・・・・・。

何をいってンだ・・・と黒崎は思う。

・・・・・・・。

急激に熱くなっていく胸の内。

感情が沸騰したお湯のように溢れだしそうになったところで、バチンと、まるでブレーカーを落とすように感情の電源をオフにした。


・・・・おちつけ。

彼女に気付かれぬよう軽く深呼吸をする。


ここで全てを明かしてしまったら元も子もない。




気が抜けた様に、黒崎はふふっと微笑んだ。


「僕の幸せは、僕が決めるんで」


いつもの軽い雰囲気を纏う。

そして、彼女の手首を握った。