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メメント・モリ

第11章 束縛


コクリ、と静かにうなずく彼女を見て黒崎は笑う。


「・・・怯えてる」


左手で頬の輪郭をなぞると、その瞳にはまだ不安が映っていた。神代のせいで生まれてしまった彼女の中にある一つの心理。この状況を放っておくことはできない。

・・・・やっかいな芽は早いうちに摘んでしまわないと・・・。


「例えばどこかの誰かさんが、僕の事を想っているとしましょうか。・・・それを早瀬さんが知ったとしても・・・」


「・・・・。」


「その誰かさんが、早瀬さんの言うように僕たちの関係を誤解していたとしても。」


「・・・・。」





――それは貴方が僕から離れて行ってもいい理由にはならない。




その言葉を黒崎はぐっと心の中で飲み込む。



「何一つ僕たちが気にすることはないんです。」


「でも、」


と彼女は口を開く。

頭の中で、神代に対する怒りが膨張した。


すぐに彼女の考えを跳ねのけるように黒崎は言葉をかぶせる。


「じゃぁ、・・・・逆に聞きますけど、早瀬さんは僕と距離を置くようにするんですか?」



その、僕にとっては無に等しい人のために?
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