第11章 束縛
「そして、余計なことを考えてる早瀬さんに困ってます。」
冷たい声・・冷たい微笑。
「・・・困る?」
「さっき僕に聞きましたよね?」
「・・・え?」
「私の事好きか?って。」
・・・・・。
ギシ・・と音がして、黒崎君がベッドに上がる。
「好きだって言ったら・・・どうするつもりだったんですか?」
神代君がよぎった。
・・・・そうなってしまったら、黒崎君とも・・・もう一緒に居られなくなってしまうかもしれない。
まるで黒崎君の冷たさが流れ込んでくるように、
すっと・・胸の中が冷めて行く。
黒崎くんとも、もう一緒に笑いあえなくなったら?
「ホラ・・・そんな顔して・・・」
黒崎君はパーカーのチャックに手を掛けて脱いだ。
その下に来ていたのは白いカッターシャツ・・・バイトの時の姿だった。
「大丈夫ですよ。最初に言ったでしょ?・・・僕は早瀬さんの事絶対に好きにならないって。」
俯いてくすくすと笑いながら、片手で、真っ黒い光沢のあるネクタイを緩めていく・・・
私は彼の言葉に心から安堵して、ぼんやりと彼の仕草を見ていた。
「だから、もう二度と僕に・・そういう事を聞くのはやめてください。」
・・・まるで釘をさすような約束の取り付け方。
雪菜は静かにうなずいた。