第10章 どこにも行けない想い
神代君の車は大きなワゴン。
もちろん運転は、黒崎君と違って…丁寧。
無言になるのが嫌で、自分から話題を振る。
「家庭教師のバイトってどうなの?」
「どうって?」
「女の子にも教えたりするの?」
年下の女の子・・神代君みたいな家庭教師が来たらきっと彼の存在を大きく意識してしまうだろうと思って聞いてみる。
「なんで?」
「いや、別になんとなく聞いてみたの。」
内心悟られたくなくて窓の外を眺めた。
「やきもち?」
「え゛!?なんでそうなるの?」
慌てて神代君をみると、にこにこしてこっちをみてる。
「冗談だよ。
女の子も教えるよ。ジョシコーセーとかね。」
「告白されたりするでしょ。」
「そうだね、されるね。」
さらりと神代君は答える。
・・・やっぱり。
落とし穴・・沢山開いてるんだろうな。
「あっさりと言うんだね。」
「まぁね。」
「・・・・願いを叶えてあげようかなとか、思う?」
「願い?どういう意味?」
「付き合ってみようかな、とか思う?」
「思わないよ。好きじゃないからね。」
「そっか。・・・・断るの?ごめんって?」
できるだけ逸らしていきたい話題なのに、どうしても聞きたくて、話を続けてしまう。
「いや。
俺の事、好きにさせてみせてって言ってる。」
その答えに驚いて、神代君を見る。