第10章 どこにも行けない想い
レンガ造りのオシャレな店。
ハンバーグの専門店、らしい。
「・・・・・・おろしハンバーグがない。」
いつもの定番メニューがなく、メニュー表を見て迷う。
「ここは煮込みハンバーグが美味しいんだよ。俺はそれにするけど、どうする?」
「うん、じゃぁ私もそれにする。」
「セットはパン?ライス?」
「パン。」
「飲み物は?俺は運転あるけど、雪菜は飲んでもいいよ。」
「悪いからいいよ。」
「遠慮するな。赤ワインの飲みやすいの頼んでおこうか。」
「あー・・・うん。じゃあ飲む。」
店員さんを呼ぶと、ささっと注文をしてくれた。
・・・さすが、秀才。
やることなすことスマートすぎる。
お店に入る時も、ドアを開けてくれたし、そう言えば、座る時も椅子を引いてくれた気がする・・・。
お店のチョイスだって間違いない。
お客の層も大人が多いのか、静かで落ち着いた店内の空気が心地いい。
「落ち着いた雰囲気のお店だね。」
「あぁ、ここは2号店なんだけど、入れるのは大人だけになってる。ワインの種類も豊富なんだよ。1号店はもう少し向こうに店があって、ファミリー向けで子供も多いんだ。」
「こういうお店よく来るの?」
「どうかな。頻繁には来ないけど。美味しいものは好きだからこの辺の店なら少し詳しいかな。」
スマート。
顔もいいし、スタイルもいいし、おまけに頭もいい。
完璧だと思う。
けれど、そんなことが分かったってしょうがなかった。
・・・・ダメ。
結局は落とし穴に落ちるかどうかだ。
ちょっと高級感のあるお肉の味。
ごろごろ入ってる野菜。
・・・・・にんじんでかいよ。
嫌いなニンジンをそっと、神代君の死角になる部分へと追いやった。