第10章 どこにも行けない想い
「家までちゃんと送ってくれたよ。」
「家の場所、教えたんじゃないだろうな。」
「ううん、ここまででいいって言ってちょっと手前までかな。」
「ならいいけど。お前、隙だらけなんだから気をつけろよ。」
「・・・・そんなこと・・。」
言葉に詰まって神代君を見ると、彼はこっちも見ずに私のノートに一生懸命何か書いている。
・・・・。
だめだ。
今の、どういう気持ちで言ってるんだ?
とか。
意識してしまう・・・・。
「ここが動詞。だからさっきのはここに入るんだよ。・・・・・分かるか?」
そう言って、神代君がこっちを見る。
目があった。
ドキンッ!と、胸が鳴る。
慌てて下を向いた。
「・・・・・今日はここまでにしようか。」
「え?」
「もう集中力切れてんだろ、お前。」
「あ、うん。」
どぎまぎしてる・・・。
私は、神代君の事は好きじゃない。
なのに・・・。
(神代君は私の事が好きなんだ。)
と思うと鼓動が速くなる。
さっきの目があった時だって、
胸がドキッとして・・・
変なの。。。
セイに対するモノとは違う・・
けれど胸の高鳴り。
・・・・・・。
身体が勝手に反応する以上・・・。
意識しない、なんて無理だ。
こうなったら…
とことん、神代君を意識してみようか?
「バイト代出たんだ。
うまい店見つけたから夕飯おごってやるよ。」
「えっ、いいの??」
「たまにはな。」
そういって、彼は笑う。
その顔は・・・・やっぱりお兄ちゃんみたいだった。