第9章 月に願いを・・・
自転車を進行方向へと回転させながら神代君がこちらを向く。
雪菜は振り返ってセイに向かい合った。
「・・・このカフェオレ、大好きなんです。ごちそうさまでした。」
「それはよかった」
セイは微笑んでる。
「あの、送っていただいてありがとうございました。」
「いいえ。」
穏やかな口調が嬉しかった。
「えっと・・、・・・またお店に会いに行ってもいいですか?」
結構勇気を振り絞って言ったのに、セイはこらえきれなくなったように吹き出して笑う。
「っはは、・・・・いいよ、いつでもおいで。」
・・・チリン。と後ろで、自転車のベルがなった。
「それじゃあ、お休みなさい。」
お辞儀をして、神代君の元へと向かう。
けれど、二歩目を踏み出そうとするとき、私の身体は止まっていた。