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メメント・モリ

第9章 月に願いを・・・



「今、帰りなの?家まで送るよ。」



どうしよう。


お酒も飲んでるし、色々な事があって動揺している今、できたら、神代君と二人きりで居たくない・・。

断らないと・・。


「大丈夫、今日は・・」



―――その時だった。



「ごめん。レジ混んでて・・待たせたね。」



背中越しに柔らかい声。


「甘いの好きって言ってたから。カフェオレ、飲める?」


くるりと振り返るや否や、

はい、と手渡された缶コーヒー。


「え?・・・あ、ありがとうございます。」

冷たい手に、缶が火傷しそうなほど熱い。

袖を伸ばして、布越しに缶を持った。



「誰?」


神代君の少し不機嫌な声。



「黒崎くんのバイト先の・・」



神代君が呼びかけて初めてセイが神代君の存在に気づいたようだ。

「・・・・駅まで、送ってもらってたの。」


感情のこもってない、神代君の言葉に対するように、
セイも何をするわけでもなく突っ立っている。



「じゃあ、俺が家まで送るんで。」


強めの口調。

神代君は私を通り越して、セイに直接話しかける。


「え、あの・・えっと。」



一緒に・・・行きたくない。



けれど、何と言っていいか答えが浮かばない。

「家まで送る」と強調された以上、セイに送ってもらうのでいいです、とも言えない。




・・・それに・・・


・・・・・セイだって、私を送っていく手間が省けて・・・









・・・・嬉しいかもしれない。






私は諦めた。
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