第8章 落とし穴
繋いだ手が気になって、上手に呼吸もできなかった。
階段を下りて、そっとセイは手を離す。
あまりの胸の苦しさに大きく息を吸った後、思わず思っていたことを口に出してしまう。
「セイさんがモテるの分かる気がします。」
彼の背中に伝えると、彼は振り返る。
「セイ、でいいよ。」
「え?あ・・・はい。」
「敬語もいいから。」
「えっと・・・うん。」
ぎこちない私の返事の後、セイを見るとまたこっちを見て笑ってた。
「・・あの、私変ですか?」
「あ、ごめん。・・なんか、ハムスターみたいで、可愛くて。」
「・・・・」
「仕草とか、ちょこまか動いてて、そういうのがなんか可愛くてつい笑えちゃって。」
・・・。
この人・・・・可愛いって、今さらっと2回も言った。
彼の落とし穴はさらに深くなる。
「ごめん、気分悪くした?」
顔を覗き込んで聞いてくるセイに、私は首を振った。
「可愛く、ないですよ。」
・・そう、可愛くなんて、ない。
ふと、
雪菜、今すげー可愛かったよ。
と、前に笑いかけてくれた神代君を思い出した。
・・・・神代君。
お兄ちゃんみたいな、あったかくて大きな存在。
・・・・神代君のこと、大好きで、彼と付きあったらきっと幸せになれるんだろうな。
ずん。と気分が重たくなった。