第8章 落とし穴
「はい。」
店のドアを出たところで、手を差し出される。
「?」
「階段、落ちそうだから。」
・・・手。
繋ぐの・・・・?
セイさんの手の上に自分の手を重ねて階段を下りる。
彼は何気なくしているのだろうけれども、この姿はまるでお姫様にでもなったような気持ちにさせる。
雪菜はセイさんの周りが穴だらけと言ったリカさんの気持ちが分かる気がした。
ダメだ・・・
あたし・・・完全にその穴に落ちそう。
生まれて初めての恋はこんなにもあっけなく始まるのか。
一目惚れとか、空想の世界にだけだと思っていたのに・・・
これはもう、落ちるという以外他に例えようがなかった。
そんな…ウソでしょ?