第8章 落とし穴
「また来ます。」
雪菜が挨拶をすると、リカさんが嬉しそうに手を振ってくれた。
「今度来た時、話しの続きができてたら聞かせてね!」
黒崎君は相変わらずの無愛想で、「じゃあね。」と言って会話が終わったっきり、別のお客さんの接客をしている。
ぺこりとお辞儀をして、ドアを開けようとすると後ろから大きなリカさんの声がした。
「あ、そうだ。セイ、貴方今日もうあがりでしょ。駅まで送ってってあげなさいよ。」
!?
「ん?いいですよ。別に。」
背中で繰り広げられた会話に振り返る。
扉の前に立っている私とは反対に居るセイを見ると
エプロンをちょうどはずしているところだった。
「えっ、そんな悪いですし・・いいです。」
ぶんぶんと手を振る雪菜、興奮している為にその動作は大きい。
「いいよ。近いし。着替えてくるからちょっと待ってて。」
・・・・どうしよう。
戸惑い、黒崎くんに視線を送るが気付いてくれない。。
心臓がまたどきどきしてくる。
セイさんを意識している自分が、恥ずかしくて、嬉しかった。