第8章 落とし穴
「神代君は大事な友達なんです。お互い恋愛感情なんてないんですよー。だからきっとそれは黒崎・・あ、ハルくんの誤解です。」
私は軽く笑う。
「だから・・今そういう自覚がないって・・っ痛って!!!」
急に黒崎君がとび上がった。
「そういう意地悪言うとモテナイわよ。・・それともハル、やきもち焼いてるのかしら?」
ふふふ、と不敵に笑うリカさん。
黒崎くんはカウンターの下に消えてしまってる。
「雪菜ちゃん、ハルみたいな意地悪男も駄目だし、セイみたいな優しいだけの男もだめよ。
変な男の落とし穴に引っ掛かったら終わりなんだから気をつけなくっちゃね!!!」
ウインクをするリカさんの美しい顔に無理やり作った笑顔で答えた後、その横でグラスを拭くセイに視線を移す。
・・・優しいだけの男?
セイはリカさんを肯定も否定もせずにただ笑みを浮かべたまま話を聞いているようだった。
リカさんの恋愛話は続く。
カランと音を立てたグラスは綺麗な青色をしていた。
セイが作ってくれたのはガルフストリームというオレンジの甘くてさっぱりとしたお酒。
すごく、美味しくて、両手でグラスを持って口へと運んだ。