第8章 落とし穴
「あらー!なによ、そのコウタロウくんって!!そんな人がいるの?」
絶句している私に全く気付かないのか、リカさんは益々テンションを上げてくる。
「たぶん、今の今まで早瀬さんは気付いてなかったと思いますけど。」
黒崎君は何でもない事のように淡々と話す。
「きゃー!そんな大事なこと、本人より先にハルが話しちゃダメでしょ!!」
ばしんっ!!と物凄い勢いで、リカさんが黒崎君の肩を後ろからはたいた。
・・・大きな手。
「った!!!!」
黒崎くんの身体がぐらっと前に傾く。
私はぼんやりとそのやり取りを見ていた。
・・・・・。
神代君が・・私の事?
放心状態の私に気付いたのか、リカさんは黒崎君を叩いた大きな手を私の頭に乗せる。
「そのコウタロウくんのこともやっぱり好きじゃないのね。ハルに意地悪されちゃったわね、かわいそうに。」
好きじゃない・・?
ううん、好きだよ。
嫌いじゃないもの。
神代君もそうでしょ?
私のこと、嫌いじゃない。