第8章 落とし穴
「ってことはカッコいいとは思うけど、好きっ!とまではいかないんだ。」
リカさんはよほど恋愛話が好きなのか、興味津々で聞いてくる。
「はい、恋愛したい。とは常に思ってたりするんですけど・・・なかなか人を好きになれなくて・・・」
「まぁね、人の事を好きになろうなんて、しようとしてできるものじゃないしね。よく言うでしょ、恋は落ちるものなのよ。」
「・・・落とし穴みたいに?」
セイさんがまた私の質問に笑う。
「そうそう、時には自分の意思に反して落ちる事もあるしね。抜け出したくても出られなくなることとか・・って、珍しいわね。セイは何を笑ってるのよ?」
「いや・・落とし穴って、ちょっと面白くて」
「早瀬さん、出会ってそうそうセイさんに笑われてばっかりだね。」
「・・・・///」
「セイは笑ってる場合じゃないでしょ。あんたの周りにぽこぽこ開いてるその穴いい加減にうめなさいよ。」
「俺、掘った覚えないですよ。」
「誰かれ構わず優しくするから穴が開くのよ。いつか刺されるんだからね。」
・・・やっぱりモテるんだなぁ。って、納得してる自分。
「セイさんもそうだけど、早瀬さんも全く自覚ないですよね。」
「えっ?私?」
急な話の流れに驚いて顔を上げる。
「神代公太郎。落とし穴、落ちてますよ。」
・・・え?
静かに見下ろす黒崎君の目は冷たい。