第8章 【第6章】来星ナユ、ついに対面!!
ラントの言葉を真正面で受け止め、メラはフン、と鼻であしらう。
「それが本音かよ。ハッ!お前こそ今のうちに話せる幸せでも味わっとくんだな」
2人の間に見えない火花が飛び散る。
しばし睨み合っていると、眠っているチユが少し呻き始めた。
「「!!」」
『うぅ…メラ君、ラント君…?』
「チユ!」
2人はチユが起きたことに安堵し、ホッと胸を撫で下ろした。
「チユ、身体に違和感はないか?」
『…ううん。まだちょっと頭がフラフラするけど…』
「来星ナユによる洗脳のせいだな…ひとまず意識が戻ってよかった」
『…私、確かナユちゃんに…痛っ』
「お、おい!まだ寝てろって」
起き上がろうとするチユを慌てて止めるメラ。頭の中をいじくられかけたのだ。身体の不可は相当のはずである。
「…チユ。今日はすまなかった。君を1人にしてしまった私の落ち度だ」
『…ううん、気にしないで。役に立ちたいって押し切ったのは私なんだし。…メラ君も、ありがとう』
チユはラントにフォローを入れ、メラに目を向ける。
チユは意識を失っていたので、メラに助けられた記憶はないが、彼がここに居るということは何かしら助けてくれたのだろう、と感じていた。
ラントはふと窓に視線を移す。夕日がもうすぐ沈みそうだ。
「…もうすぐ下校時刻が過ぎてしまう。私たちはそろそろ帰るとしよう」
『あ、私も…』
「お前は寝とけ。園等先生と学園長から許可取ってっから」
『…そっか…』
チユは申し訳なさそうに目を伏せる。
『(また迷惑かけちゃうな…)』
チユは園等と学園長にかなり恩義を感じている。
園等はチユの事情を聞いた日から何かと気にかけてくれるし、手足の不便さをよく理解してくれた。
学園長は自分の手を見てもなおY学園の生徒として受け入れてくれた。人を傷つけてしまう手を持っているにも関わらず、最愛の娘であるエマと普段通りに関わらせてくれる。