第10章 【第7章】気が付けば夏休み
そして到着したキャンプエリア。
やはり自然豊かなエリアのためか、穏やかな空気が漂(ただよ)っている。
『(向こう側に人の気配…あんまり近づかないでおこう)』
どうやら夏季休暇中に実家に帰らなかった生徒がいるようだ。
今の自分はこれでもか、という風に異形な部分をさらけ出している。あまり会うのは好ましくない。
『ルー。もうちょっと川上の方に行こうか』
「うー」
生徒は複数、かつ川下の湖の辺りに集まっているようだ。登ってくる可能性を考え、チユたちは川上の方にある湖へと移動した。
「上、行く、競走!」
『あっ、ずるい!』
バビューン、と効果音がつきそうな速さで飛んでいくフレアルーパー。
フライングしたフレアルーパーを急いで追いかけるチユ。
追いかけるのに夢中なあまり、怪しげに目を光らせるセミ型監視カメラに気付かなかった。
セミ型監視カメラの映像は風紀委員である影野シノブの持つタブレットに送信される。
シノブはタブレットに写った人物に驚いた。
YSPクラブを陥れようとキャンプエリアに来たのに、まさか委員長の本命が現れるとは思ってもいなかったからだ。
そもそも風紀委員会の情報ネットワークを駆使しても彼女の居場所が掴めなかったのだ。驚くのは当然とも言える。
「ナユ様!これを見てください」
「なーに?面白いものでも…!?」
ナユはシノブと同様に驚いた。夏休みが始まってもなお居場所が分からなかった獲物が、自分たちの張った網にかかってきたのだから。
「あの怨霊と遊びにでも来たのかしら…これはある意味チャンスね」
ナユは寝そべっていたハンモックから降り、シノブを残して湖へと向かった。