第8章 【第6章】来星ナユ、ついに対面!!
そこでメラは、さっきから感じている人の気配に話しかける。
「…てっきり、先に帰ったかと思ってたぜ。生徒会長サマよぉ」
「………」
保健室の入り口付近にはラントが立っていた。おそらくチユの身を案じて来たのだろう。
ラントは無言で保健室に入ると、チユとメラに近づく。
「…容態は?」
「今は様子見だとよ。流石の園等先生も、今回の件はお手上げらしい」
「そうか…」
ラントはベッドの上部まで歩くと、片手を伸ばしチユの頬に触れる。
暖かい人の体温に、ラントは少し安堵した。
ふ、と微かに微笑む様子に、メラはラントが笑う表情に驚いた。
「(こいつも笑うときあるんだな…)」
「…雷堂。今日は助かった。礼を言う」
「別に…チユを助けるのは当然だ」
かつては自分の方がチユに世話になっていたのだ。その恩を返す義務がある。
そしてなにより、メラにはチユに対して恩よりも強い想いがある。
「…お前。チユのこと、どう思ってんだ」
漢の勘か野生の勘か。メラは自分のような想いを持っている者が自分以外にもいることは気付いていた。
メラの目の前にいる者、霧隠ラントがその1人である。
「…答える義理は無いな。私がチユにどういう感情を抱いていようと、君の知ったことではない」
メラにはラントの拒絶が肯定を意味しているように感じた。
「…そうか」
「だが」
「あ?」
「…俺は、誰にもチユを渡す気は無い。今は協力関係にあるため、多少のことには目を瞑ってやる。チユに触れられる幸せを、今のうちに噛み締めておくことだな」
ラントのそれはメラに対する挑発であり宣戦布告であった。