第2章 【第1章】Y学園にはミステリアスな先輩がいる!?
「私は1度、チユに"なぜいつも手袋を着けているのか"と聞いた」
するとチユは悲しげに目を伏せて答えた。
_「皆を傷つけちゃうから」_
そのときの彼女は本当に泣きそうなほど怯えていた。
それを見てからラントはこの質問は二度としないと、幼いながらに肝に銘(めい)じた。それほどに彼女が悲しい顔をするのが嫌だったのだ。
そしてラントがエイリアンに襲われたあの日。チユはずっと同じ言葉しか繰り返さなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「私がいるから襲われた」
「私のせいなの」
「私が悪いの」
泣きながらもひたすら自分のことを責めるチユ。その時のラントにはとても理解できない言葉だった。
家族が突然いなくなり、精神的に疲れていたこともあるが、エイリアンに襲われたこととチユになんの関係があるのかと感じていた。
「チユには何も関係ない」
「悪いのは全部エイリアンだ」
「チユは何も悪くない」
ただただチユを慰めたことをよく覚えている。
しかしラントの慰(なぐさ)めも虚(むな)しく、彼女はそれっきりラントに関わらなくなった。
「なーんか、まるで自分がエイリアンを呼び出したみたいな言い方っすね」
これはもうクロなんじゃない?とでも言いたげなチアキ。そんな態度の彼にメラは怒りを燃やす。
「チユはそんなヤツじゃねえ!!あんなに他人に優しいのに、そんな残酷なことできるわけねーだろ!!」
「自分の意思じゃないとしても、操られてる可能性だってあるわけっしょ?その証拠に、あの風紀委員長は操られてるわけだし」
「ぐっ…」
チアキの的を得た意見に拳を握りしめるメラ。友達の、しかも恩のある人の疑いを晴らせないことが悔しいのだ。
しかしチアキの意見を聞いてラントは眉をしかめている。