第2章 【第1章】Y学園にはミステリアスな先輩がいる!?
「これは、まだ私がエイリアンに家族を奪われる前の話だ」
そう前置きをし話し始めるラント。他のメンバーは真剣に話を聞くために各々の定位置へと腰を落ち着けた。
「彼女…チユと私は親同士が仲が良く、お互いの家に泊まったり、旅行に行くほど親睦が深かった」
ラントの頭に過去の風景が流れ始める。仲良く話す両親たち。妹と仲良く遊ぶチユ。そして妹気質のあるチユの面倒をよくみていた自分。
妹が2人できた気になり、自分が兄なのだからしっかりしなければ、と張り切っていた子供時代を思い出すラント。
その光景が想像できたのか、微笑ましくなるジンペイたち。
「まさに平穏そのものだった。…だが、チユは私たちに隠しごとがあった」
「え?なんの本買いてたの!?」
「"書く仕事"じゃなくて"隠しごと"!秘密があったってことだよ!」
ジンペイのボケにすかさず突っ込むマタロウ。ラントは2人のコントをスルーした。
「今でもそうだが、彼女はいつも手袋をしていた」
「手袋って、冬によく着けるアレですよね?」
「ああ。そう捉(とら)えてくれて構わない。アレは…確か"ミトン"と呼ばれる種類だったな。彼女はいつもそれを着けて過ごしていた」
「いつもって…冬以外でもってこと?」
問題の確信をついたチアキの問いにラントは頷(うなず)く。
「そうだ。彼女は真夏でも寝るときでも必ず手袋をしていた」
しかしフブキは不思議そうに首をかしげる。
「でも、そんなにおかしいことかしら。今時(いまどき)なら、潔癖症とかあるって聞くし」
「私も当初はそう考えていた。だが…」
チユにそんな素振りは無く、飲み物の回し飲みなども平気でやっていたという。
「ん〜…もしかして怪我をしたとか?」
「醜(みにく)い傷ができて、人前に晒(さら)したくなかった。そして彼女は人前で手を隠して今日も過ごす…なんて感動的なんだ!」
「勝手に話を捏造するな」
コマの案にボケを加えるジンペイ。ラントは冷静に対処して一息つく。