第8章 【第6章】来星ナユ、ついに対面!!
なんなんだ、一体。
チユはナユのあまりに激甘な歓迎対応に、自分がこの場へ誘(いざな)われた理由を聞くことを忘れるほど困惑した。
ナユに誘(さそ)われソファに腰を下ろすと、ナユが腰に抱き着いてきた。
人に抱き着かれるなんて滅多に経験の無いチユは思わず固まってしまう。
その反応を見たナユは「初心(うぶ)なんだから」と楽しそうである。
目の前のテーブルにはシノブが用意してくれたのか、いつの間にか紅茶が入ったティーカップが2人分と、大皿に乗ったラングドシャが置かれていた。
そして用意したであろう本人はいなくなっており、この部屋はチユとナユの2人きりになってしまった。
「チユ、これ好きでしょう?はい、あーん」
『(なんで知ってるの!?)…あ、あーん』
確かにチユはラングドシャが好きである。他のお菓子とは違う独特のサクサク感が好きで、曲作りのお供に、と決めている程である。
チユは困惑しつつも、ナユ自らの手で差し出されたラングドシャを素直に口で受け入れた。
「ふふ、ほんとに可愛いわ〜。ほら、もう1個」
『く、来星さ、恥ずかし…』
「もー、名前で読んでってば。えいっ」
『っわ』
ナユはムスッとした顔になると、抱き着いた格好のままチユを押し倒した。
柔らかいソファは押し倒されたチユを優しく受け止めた。
チユはまた固まった。チユは生まれてこのかた、人に押し倒されるなんて経験をしたことがないため、反応の仕方が分からなかったのである。
『くる、えと、ナユちゃ、あ、』
チユは顔を真っ赤にして、どもりまくった。いわゆるキャパオーバーを起こしたのだ。
「こーんなに初心(うぶ)で、無防備で、可愛くて…ほんとに、閉じ込めてしまいたいわ」