第8章 【第6章】来星ナユ、ついに対面!!
『ここが、風紀タワー…思っていたより高いなあ』
男たちの決意もいざ知らず、チユは呑気な感想を胸にタワーの前に立つ。
流石、生徒たちを監視するという名目の元に建てられただけある。これでは学園の風紀を乱すのも一苦労だろう。
入口には風紀委員らしき男子生徒が1人立っている。
さて、どんな洗礼を受けるのか。とチユは身構えた。…だが。
「龍我チユ様ですね。僕は影野シノブといいます。ナユ様より、貴女をご案内するようにと仰せつかっております」
『…あ、ありがとう…。えと、あの、"様"を付けられるのは、ちょっと…』
「貴女を丁重に扱うように、とのご命令です」
『……そう』
影野シノブという少年の自分に対する丁寧さに、思わず腰が引けてしまうチユであった。
初対面の相手ということもあり、どもりまくって格好もつかない。
そもそも、敵であるハズの自分を、何故わざわざ丁重に扱うのだろう。
悶々(もんもん)と考えている間に、ナユがいるという部屋に着く。おそらくこのタワーの最上階だろう。
「ナユ様、影野シノブです。龍我チユ様をお連れしました」
「どうぞ、入って」
「失礼します」
『…失礼します』
「ふふ、そんなに固まらなくていいのに。可愛いわね」
部屋の奥ではナユがソファに寝そべってくつろいでいた。チユがおずおずと入る様子が面白かったのか、クスクスと笑っている。
「ほんと、アイツらの傍に置いておくのが勿体ないわ。ねえ、チユちゃん。アナタ、風紀委員にならない?あんなヤツらと一緒にいるより、ワタシと仲良くしましょう」
『…え、えと…』
「ああ、お茶を用意してなかったわ。それともジュースがいい?お菓子もあるわよ」
『…来星さんのと、一緒のもので…』
「あら、アイツらのことは名前呼びなのに、ワタシは苗字なの?随分と他人行儀ね。ほら、こっちへいらっしゃいよ」
『……お邪魔します』
ダメだ、ついていけない。ごめんなさい皆。役に立てないかもしれない。