第7章 【第5章】正義のハッカーになろう!!…と思ったのに
しかしこの場でラントだけはよく知っている。
チユは1度決めたことは最後まで諦めずにやり遂げる性格だと。
チユを無理やり引き止めることは簡単だ。彼女の手を取り懇願すればいい。
そうすれば彼女は眉を下げて渋々折れてくれるだろう。元々我の強くない彼女のことだ。自分の意見を無理に押し通すことはしないだろう。
だが、チユの意見を優先させてあげたい自分がいることも、ラントは知っている。
「…何かあったら、直ぐに逃げるんだ。力を使って暴れてもいい。責任は全て生徒会長である私がとろう」
『ラント君…!』
「えぇーっ!?そんな、ホントに行かせるんですか!?」
「そうッスよ、せめて誰か1人でも着いてって…」
「…こうなったチユは、もう動かせないからな」
仕方なさそうに微笑むラント。ただ1人の人物に向けるその微笑はとても優しかった。
『(滅多に折れないラント君が、ここまで後押ししてくれた…絶対に役立ってみせる!!)』
「…っチユ、待って」
この場を去りかけたチユをチアキが追いかける。
「…アイツとの話が終わったら、必ず帰ってきて。ちゃんと、会いに来て」
チアキは不安だった。
_もし、昔のバンド仲間のようなことになったら?
今離れたこの瞬間、チユも彼らと同じようにいなくなるのではないか。
チユは思わず微笑んでしまう。にやける頬が抑えられないのだ。
_こんなにも、自分のことを心配してくれる人がいるなんて。
相手が自分のことを好いてくれていると、自惚れてしまうではないか。
『…分かった。約束、ね』
「…うん」
『(私にはこんなにも心強い人たちがいる)』
それを思えば、チユには何も怖いものはなかった。