第7章 【第5章】正義のハッカーになろう!!…と思ったのに
なんと、敵である風紀委員、それも長(おさ)から直々のお呼び出しである。
あまりにも予想外すぎる事態に固まる一同。
『…ど、どうしよう…』
「チユ先輩、今すぐ隠れよう!!どっか見つからないとこ…YSPクラブとか!!」
「ダメだよジンペイ君!あんな防犯設備皆無な部屋に、チユ先輩を1人で置いていけるわけないじゃないか!!」
焦るジンペイにすかさずツッコミを入れるマタロウ。どんな時でもボケるのが通常運転なジンペイである。
「そうよ!せめて誰もイタズラで入って来なさそうな教室とか…生徒会は!?あそこなら流石に風紀委員長でも…」
「うちの体育倉庫ならどうだ。あそこは人も多いし、人1人探すのだって大変だろう」
「確かに、"木を隠すなら森の中"っしょ」
「…いや、そもそも何処に移動するにしても、風紀タワーから見つかるな」
「そんな…」
ラントの言う通り、風紀タワーは学園全体を監視できるほど視野が広い。
もしかしたら、ナユがもうこちらの行動を把握していて、既にチユが監視されているかもしれない。
『…私、行くよ』
「ちょっ、チユ先輩っ!?」
「敵の呼び出しを受ける道理などない。教えただろう、来星ナユは_」
『ラント君』
チユがラントの目を見据えて呼びかける。チユの覚悟の決まった眼にラントは口を噤(つぐ)む。
『皆も、心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だから』
そう言って微笑むチユ。口角を少し上げただけのそれは、以前のような取り繕った笑顔ではない。その表情は喜色に満ちていた。
『それにね、これは多分チャンスなんじゃないかな』
「チャンス…ですか?」
『うん』
確かに風紀タワーなんて敵の本拠地、それも内部に入れる機会なんて滅多にない。
一同は悩んだ。敵の本拠地に彼女1人行かせるか、呼び出しを無視して共に行動させるか。