第7章 【第5章】正義のハッカーになろう!!…と思ったのに
「チユ、エイリアンと分かり合おうとか考えてるっしょ?」
『え…』
チアキの指摘に戸惑うチユ。無自覚にも相手に情けをかけようとする彼女にチアキは呆れる。
「あのさぁ、この間も似たようなこと言ったけど…チユは被害者っしょ。しかも僕らよりずっと辛い目にあわされてる」
『そんなことないよ。私なんかより、2人の方がよっぽど辛いよ』
チユは手を振って否定する。
自分の体が変化したことは確かに辛かったが、2人は身近にいた大切な人たちを奪われているのだ。きっと、自分の辛さとは比べものにならない。
かく言うチユも、本当の家族のように接していたラントの両親と妹を奪われた辛さがあるが、ラントにとっては血の繋がった家族である。やはり辛さは比ではないだろう。
「…チユ」
『?』
「…いや、なんでもない」
そんな様子のチユにラントは声をかけるが、彼は何かに耐えるように話を濁した。
結局この話は有耶無耶になり、今回の本題に切り替わった。
「(私には…チユの重荷を共に背負うことはできないのだろうか)」
ラントは自分の無力さに悔しさを覚え、拳を握りしめた。