転生したけど、モブキャラだから彼の観察日記をつけています!
第3章 幸せの時
「ふぁぁー…ねみー」
仕事を終えた優が、欠伸をしながら部屋へ入ってくる。
勝手知ったる山本の執務室。
しかし、そこにあるはずの山本の姿はなく、アユムが独り居るだけだった。
アユムは優の声に、ディスプレイへ向けていた視線をあげると「おかえり」と微笑む。
「…ただいま。あれ?山本さんは?」
「おかえり」という言葉がなんだかくすぐったく、少し照れたように頭をかきながらソファに座ると、優は辺りを見回しながら聞いた。
「会議よ。…昨日も徹夜で仕事?」
「ああ、オレ、そろそろ単位やべえ」
優は肩をすくめると冗談めかしてそう言う。
確かに出席日数はギリギリだろう。
だが、優の知識と頭をもってすれば、大学の試験など危なげなく通過するだろうことは想像に難くない。
「お疲れ様…無理しないでね」
だからこそ、アユムは単位よりも優自身の身体が心配になる。
山本からは甘やかしすぎだど揶揄われるが、当の本人が自分の身体を二の次にして危険な任務に出かけていくのだから、自分1人くらい甘やかしすぎても良いくらいだとアユムは思っていた。
「……」
「どうしたの?」
不意に、自分の顔を見つめた後に黙った優に、首を傾げる。
なにか、変なことを言っただろうか。
アユムが己の考えを巡らせていると、優は何かを思いついたように悪戯っぽく微笑むと、ヒラヒラと手招きをした。