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転生したけど、モブキャラだから彼の観察日記をつけています!

第4章 懐かしい味


「…カレー食いてー」
山本の執務室のソファで勝手にくつろいでいた優が、ふとそう漏らす。
「えっ?」
アユムはキーボードを打つ手を止め、資料から目をあげて優を見た。
優は、机に頭を乗せたまま、顔だけをアユムに向けて、無邪気な顔で続ける。
「今までさ、オレ、インド行ってただろ?」
「ええ、だから、美味しいカレー、たくさん食べたんじゃないの?」
「食った。でもそーじゃなくて…久しぶりにアユムのカレー、食いたいんだよな」
「…」
アユムは、一つため息をつきながら笑うと、整理していたファイルをセーブして閉じる。
あの無邪気な顔には、いつだって逆らえない。
「本当にフツーの、前に作ったようなカレーしかつくれないわよ?」
「作ってくれんの?!」
「あり合わせでよければ」
「マジ?!サンキュー!!」
普段は自分の想像もつかない激しい戦地で命をかけて戦う彼。
そんな彼のつかの間の休息に自分を選んでくれるなら。
青年へと変わりかける少年の眩しい姿に、わすがばかりの寂しさと愛おしさをこめて。
いつの日か、自分は必要とされなくなる日が来る。
でも、それまではーー。
「少し待ってて」
「なんか手伝うことある?!」
「んーじゃあ、野菜の皮剥いて」
「まかせなさい!」
戦士としての使命から解き放たれ、年相応の少年として過ごすことのできるひとときに、わずかでも安らぎと癒しを。
「…まったく。アユムの資料の手が止まるのは、いつも優の世話のためだな…」
影から二人を見守り、ひとりごちる上司の目も、言葉とは裏腹に優しい。
静かに、夜は更けていく。


オマケ

「ん?なんかいい匂いがしやがると思ったら旨そうなもん食ってるじゃねーか!」
「あら、おかえりなさいジャン」
「ひゃん!へへーひやふはへーはへえほ!!(ジャン!てめーにやるカレーはねえぞ!)」
「あ?何言ってんのかわかんねーよ」
「お腹空いてるなら少し食べてく?」
「おー食う食う」
「むぐぐ…」
「…カレーとってもあいつはとりゃしえよ」
「あぁ?!」
「…ったくテメーは。そんなんだからいつまでたっても半人前なんだよ!」
「うるへー!!」
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