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転生したけど、モブキャラだから彼の観察日記をつけています!

第2章 どこかへ行きたい


「…ふむ」
山本はため息混じりにそう言うと、革のリクライニングシートに深く身体を預けた。
答えなど、とっくの昔に決まっているのだが。
「頼むよ山本さん!」
パンッ!と手を合わせて目を瞑りながら、優は山本に懇願する。
「オレが代わりに調査行ってくるからさ」
優の能力があれば、遺跡の調査、封印は1日もあれば終わるだろう。
残りの日数で、 アユムに遺跡内を案内する事くらいわけもない事だ。
幸い、この遺跡は現在他のライバル企業に狙われている遺跡でもない、比較的安全な遺跡である。
山本は目を瞑り、素早くこれからの算段を練った。
「…良いだろう。期限は8日だ」
「よっしゃあ!さすが山本さん、話が分かるぜ!」
「そのかわり、何があってもお前が アユムの安全を確保するんだぞ」
「当たり前だろ!」
目の前で起こる出来事についていけない アユムは、軽いめまいを起こしかけながら、それでも必死で口を開く。
「ちょっと待ってください。お気持ちは嬉しいですが、そんなことしていただくわけには…」
「なんでだ?」
「なんでだよ」
アユムの台詞に、山本と優が同時に口を開く。
「だって…」
言いかける アユムの言葉を手で遮ると、咳払いを一つして、山本は神妙な口調で語り出した。
「 アユム、君は私の秘書として、様々なことを知っておいて貰わなくてはならない。ミッションに関する事、アーカム内部の事、スプリガン達の事…そしてそれは、発掘の現場を知るということにおいてもだ。」
山本は、そう言うともっともらしい顏を作り、顎の前で手を組んだ。
「私としては、色々な経験を積んでほしいと思っている。もちろん、あくまでもこれは私の希望であって、嫌なら無理にとは言わないが…」
「…だってよ?」
二人の視線を受け、 アユムは困ったように笑った。
言葉に甘えなさいと、その暖かい視線は言っている。
「ーーでは、行かせていただいても、いいですか?」
こんな夢が叶うなんて。
そばに居られるだけでも幸せだと思っていたのに。
暖かい心遣いに涙が出そうになる。
「お、おい!泣くなよ!」
「泣いてないよ」
嬉しくて嬉しくて笑みがこぼれる。

「よろしく、お願いします!」
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