Madly in Love 【リヴァイ】【進撃の巨人】
第28章 誘拐
「ええ……まあしかし、そう簡単に渡してくれそうもないので……これどうぞ」
にっこりと笑いながらその男はエルヴィンに小切手を差し出した。エルヴィンは表情を変えない。
こいつ……今婚約者とかクソみてぇなこと言ったか?巫山戯んな、そんなもん俺以外にいてたまるか。
「……巫山戯んじゃねえ、金でこいつは買えねぇよ。元々俺のもんだ。お前なんかにやるわけねえだろ」
震えているステラを庇うように立ち、その男を睨みつけた。事情は知らないが、早いとこ此奴を追い出さなくては。
「……いい加減にしろ、この人に近づくな」
ヴァニーユも殺気を消すこと無く俺の隣に立った。
しかしその男はへらっ、と笑うだけだった。
「うーん、一筋縄じゃ行かないんだね……まあいいや、おいでルージュ」
リヴァイとヴァニーユが立ちはだかっているにも関わらず、その男はステラに声をかけた。
「……お願い、」
「うん、なあに?」
掠れた声で震えながら言うステラに、その男は仮面のような笑顔を向けた。
「お願い………帰って……
財産が目的ならば相続権はあなたに譲るから……お願い……」
「うーんそっか……じゃあこれならどうかな」
もう我慢ならねえ、貴族だろうがどうでも良い。
これ以上、愛しい人が恐怖に陥れられるようなことを許せるはずが無い。
その男の胸倉を掴みぶん投げようとした時、そいつは銃を取り出し俺の心臓に向けて引き金を引いた。